噂は走るよ、矢の如く

 昨日、鉄平に告られて……てゆうかプロポーズされて、手を繋いで帰って……そして今朝。なのに……

 なんでこんなに噂になってんのよ!

 

 

「杉野君と付き合ってるって、ホント?」

「…そうなの?」

 教室に入って席に着くなり、裕美と奈津子が走って来た。

 噂話に疎い彼女たちまでもが知ってるだなんて……これはもう、高等部のほどんどが知っているに違いない。

「信じられないと思うけど、ホントのことだよ。昨日の放課後に告られちゃった。で、付き合うことになったんだけど……そこんとこ、ちゃんと話すから。昼休みに、ね?」

「うん」

「わかった」

 裕美たちが離れていくと、クラスの女子がコチラを伺っているのが見えた。

 「ホントのところは、どうなの?」なんて聞きたいんでしょうけど、無視させてもらうわ。私は、皆に言いふらすことなんてしませんからね!

 あ、でも鉄平は……

 

「っはよ〜!」

 そのとき鉄平が教室に入ってきた。

「おい杉野!おまえ野々村と付き合ってんのか?」

 太田君の声が、クラス中に響く。

 それに対して私が文句を言おうと口を開けるよりも、鉄平の方が早かった。

「おうよ!もうプロポーズもしたぜ?」

 爆弾投下。

「「「キャー♪」」」

「「マジかよ!」」

「「「うそ!?…ホントに?」」」

「スッゲーじゃん!」

 おかげでクラス中が、蜂の巣を突っついたような大騒ぎになってしまった。

 開いた口が塞がらない。

 そう。鉄平は、こうゆうヤツだ。クラスのムードメーカーで、お調子者で、バカ騒ぎが大好きで………

―― はぁ…

 

 SHRでナカジー(中島先生)が来る頃には、だいぶ収まっていたんだけど

「えらく賑やかじゃないか。ところで……野々村は、杉野と付き合ってるのか?」

 なんてことを言ってくれちゃったもんだから、ウチのクラスはまた大騒ぎ!

 まさか担任から聞かれるとは思わなかった私は、呆然としていた。

―― なんでセンセまで知ってんのよ…

 

 鉄平に話したいことはいっぱいあったけど、1時限目の授業もナカジーだったから、悶々とした気持ちで受けていた。(授業内容は、私の頭の中を素通りしていった)

 

 1時限目が終わって即、鉄平に合図を送って―― 2人で昇降口まで行った。

「なんで先生が知ってんの? まさか鉄平が言ったんじゃ……」

「いや……昨夜、理事長に電話したからな。そこから流れたのかも」

「なんでそこに理事長が出てくんのよ!?」

「ん? 知り合いってゆうか、友達ってゆうか……。オレ、理事長の教え子だし」

「教え子?」

 思いがけない言葉にビックリした。 

「経営学の講義を受けたり、いろいろ相談に乗ってもらったりしてんだよ。で昨夜は結果報告の電話してさ、いろいろ話したんだ♪」

「結果報告って、何の?」

「『オレは真紀が好きだ!』ってコト、1年のときから理事長に相談してたしな〜」

「な!」

「まぁ詳しいことは追々話すとして……今日はココまで。もうすぐベルが鳴るから、2時限目のセンセが来んぞ? 戻ろうぜ♪」

 爽やかな笑顔を残して、教室へと戻っていく鉄平。

 まだ聞きたいことがいっぱいあるけれど、渋々その後に付いていく私。

 

 自分の席に戻って、溜息をつく。

 

 それにしても、理事長までが知ってるなんて……

―― じゃあ学園中が知ってる、ってことになるのかなぁ…

 

 そのことが吉と出るか、凶と出るか!?…なんて、今は全く想像がつかない。でもなぜかウキウキしてくる。

 私ってば、この状況を楽しんで…る?

 な〜んだ、鉄平と同じじゃんか!(笑)

 

 

 昼休み。

 昨日のことを、裕美と奈津子に話した。

「そうだったんだ……。私ね、真紀ちゃんも杉野君のことを好きなんじゃないかなって思ってた。だって真紀ちゃんたら、ムキになって相手になってたんだもん」

 奈津子がそう言うと、裕美は

「私は全然気付かなかったな。『なんで真紀は、杉野君のこと無視しないのかな』くらいにしか思ってなくて……」

 

 でも2人とも「「良かったね♪」」って言ってくれた。

 ありがとう♪

 

2008.00.00. up.

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