前代未聞の全校集会で大騒ぎを起こした鉄平! それなのに、何のお咎めも無い。
無ければ無いで良かったとは思うんだけど、それが不思議でたまらない私。
「なんで呼び出しとか、されないの?」
学園からの帰り道。おもいきって鉄平に聞いてみた。
「前日に、理事長と打ち合わせしてたし…ほとんどの先生も、知ってたんだよ。詳しい内容までは知らなくても『オレが真紀のことを話す』ってコトはな。…まぁ学園生にとっちゃぁビックリだわな。予想通りの反応をしてくれて、面白かったぜ?」
「面白かった!?…私は恥ずかしかったわよ。それに何? 鉄平は打ち合わせなんてするくらい、理事長と親しいの? なんでそんなことができるの?」
「ん? 今はまだ内緒♪」
―― 内緒…
「ねぇ鉄平。今はまだ、ってことは…そのうち教えてくれる、ってこと…だよね?」
「うん?」
「私、ちゃんと聞きたいの。そりゃあ誰にだって、秘密とかあると思うよ?でも…『内緒』なんて言われたら不安になるし、寂しいよ……」
―― ヤダ、泣きそうになってきた…
「あ、いやそんなつもりで言ったんじゃないんだ。不安にさせちまってごめんな?深い意味なんて無ぇし、真紀に話すタイミングを計ってるだけなんだからさ」
「…ホントに?」
「ホントにホント。土曜日に、ちゃんと言うから」
「土曜日…?」
「そ♪ デートしねぇか? 先週の仕切り直しといこうぜ」
「え!?」
「そんなにビックリしなくてもいいじゃんかよ〜〜」
「週明けから期末テストが始まるんだよ? その前にデート、って…」
―― そりゃあ鉄平と一緒に居られるのは、嬉しいけど…
「んじゃ日曜日にオレん家で一緒に勉強したらいいじゃんか。土曜日はパーッと遊んで、日曜日はキッチリ勉学に励む。うん、学生らしいと思わね?」
「…うん、分かった。それなら楽しめるわね。…ちゃんと勉強教えてよ?」
「了〜解♪」
「…じゃあこの前見れなかった映画に行く? まだやってるから、待ち合わせも同じ時間でいいと思うし」
「おっしゃ、決まり〜」
「うんvv」
話がまとまった頃に、ちょうど駅に到着した。
そして定期を通して中に入ってからは、映画のことで盛り上がった。
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
土曜日。待ち合わせの駅へと歩きながら、今までのことを思い返す。
先週の木曜日に、告白されて…
その次の日曜日に、家族に会って……初キスして…
今週の火曜日に、嫌がらせされて……校内放送しちゃって…
翌日の水曜日の全校集会で、皆の前でプロポーズ宣言されちゃって…
そして今日(土曜日)はデート。
いろんなことが起こっている。よくよく考えてみたら、告られてからまだ10日間ほどしか経ってない。なのに、ずいぶん日が経ったように感じるのは何故なんだろう。
―― 鉄平と一緒だと、いろんな体験ができるわね…
なんてことを考えている間に、駅に到着。見ると、もう鉄平が居た。
「ごめんね、待った?」
鉄平の傍まで走り寄る。
「いや?オレもさっき来たトコ」
「じゃあ行こっか♪」
そう言って定期を通しながら、ふと思う。
―― やっぱ定期の範囲内で行けるって、イイわよねvv
「ところで恭平たちがさ〜…」
座席に座ったところで、鉄平が話し始めた。
「どうしたの?」
鉄平が言うには……恭平君と潤平君が在籍してる1年スポーツクラスは、私たちのことを応援してくれてるんだってvv
あんまり派手なことは勘弁してほしいんだけど、応援してくれる人がいるのって、なんだか嬉しい気持ちになってくる。
それと……『嫌がらせ』があったのは、あの日だけで。翌日からは何も起こってない。
誰がやったのかは分からないんだけど、犯人を探すつもりは無い。反省してくれれば、もう何もしないでくれれば、それでいいと思ってる。
―― でも、その代わり……今度やったら容赦しないわよ!
「……おいおい、もういいじゃんか。せっかくのデートなんだから、もっと楽しいことを考えようぜ♪」
ビックリして、思わず鉄平の顔を見た。
―― なんで分かるの!?
もしかして顔に出てたのかな? と思って、繋いでいた手を離して頬に当てた。
その手を追うように鉄平の手が、頬の手に重なる。
「繋いだ手は離すなよ? 真紀は表情が豊かだから、顔を見ればスグ分かるの! ……知らなかったか?」
言いながら私の手を握って、元の位置に戻す鉄平。
「スグ分かるの!? そんなの今まで言われたこと無いんだけど……ヤダなぁ。ポーカーフェイスの練習……」
「するなよ? これって、真紀の長所でもあるんだからさ」
「分かりやすいところが、私の長所? な〜んか納得いかないんですけど?」
「いいの、いいの。さ、降りるぞ〜」
眉を寄せながらもホームへ降りた私を見て、鉄平は二カッと笑っていた。
―― ま、いっか……
鉄平の笑顔一つで、コロッと気持ちが変わってしまう私って……相当、浮かれていると思う。
それでもイイよね。デートだもん♪
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
アクション映画なんだけど…映画館に入るときも、観ている間も、私たちはずっと手を繋いでいた。
帰りに入ったファミリーレストランで食事をして、映画の感想を語り合ったあとに……鉄平は、あの『内緒話』を聞かせてくれた。
私に一目惚れしたことから始まって、理事長に直談判に行った経緯から、何もかもを聞いて……めちゃめちゃ照れた。
恥ずかしかった。
「鉄平……そこまでしてくれたんだね。でも私そんな…」
「オイオイ。そこまでしてくれるような子じゃない、なんてことは言うなよ?」
「先回りされちゃったか。…なんで分かったの?」
「だ〜か〜ら〜、言ってるだろ? 『分かりやすい』ってな」
「やっぱ、そうなの?」
「ん。オレ限定で♪」
「なにそれ〜!?」
2人で大笑いした後、急に鉄平が真剣な顔をして見つめてきた。
「いきなり、何?」
―― そんな顔で見ないでよ!ドキドキするじゃないの…
「期末テストが終わったら、真紀のご両親に会って挨拶したいと思ってるんだ。来週の土曜日なんか、どう?」
「な、んで?」
「将来のことも含めて、ちゃんと言っておきたいんだ。そしたら、大っぴらにデートできるし……2人だけで旅行にも行けるじゃん?」
「2人だけで、旅行……ってことは…」
ボンッ!と音が出たかと思うくらい、顔が真っ赤になってしまった。
「真紀は、ナニを考えて赤くなってるのかな〜?」
そんな私を見て、ニヤニヤしながら顔を覗いてくる鉄平。
「からかわないでよ…」
「な〜んてな♪ ……実はオレも考えてる。…まぁ、そうゆうことだから。OK?」
「うん…」
そんなこんなで……両親に会わせる約束と、旅行の約束も……した。
あまりにも早い展開に、もう……笑うっきゃない?