番外編1

 弟が、あんなに変わるなんて思わなかった。「彼女」のおかげなんだろうね……

 

 

 僕達は双子の兄弟。顔は瓜二つで、背格好もソックリ。

 違うところと言えば、髪の色くらいかな?

 性格も良く似ているけど、……弟のほうがちょっと厳しいかもね。

 

 弟は、告白されると「じゃあ付き合おうか……」と言って付き合いを始めていた。

「それでいいの? 稔は本当に、その子のことが好きなの?」

「嫌いじゃないよ。断るの可哀想だし……。付き合っているうちに、好きになるかも知れないだろ?」

 僕が「そんな理由で付き合っちゃダメだよ」と言ったってダメだった。そして……… 

「女の子は勝手だね。『こんな冷たい人だなんて思わなかったわ!』なんて言われても困るよ。僕は元々、こんな性格なのに……」

 別れ話を持ち出されて傷つくのは、いつも弟の方だった。

 

 確かに弟は冷静沈着だし、理論的な考え方をするし……優しいけれどもキツイことも言うし、マメに電話やメールもしない。

 だからと言って勝手に想像しておいて、勝手に幻滅しないでやってほしい。外面だけじゃなく、内面も見てやって欲しい。

 

 だけど今度の彼女は、弟の内面も好きになってくれたし……何よりも“弟の方から告白した”っていうんだから! 弟を『その気』にさせた彼女は、本当に凄いと思う。 

 弟があんなに独占欲が強くて、我儘で、意地悪だ―― なんて知らなかったよ。

 “人間らしくなった”、というのは少し言い過ぎかもしれないけれど……

 兄さんは嬉しいよ。

 

 

― End.―

2008.08.06. up.
瀧川学のヒトリゴト。裕美と付き合う前・後の稔の様子を、兄の目線で語っています。
※ この話は、連載を開始して間もない頃に出来上がっていました。なのに本編がなかなか進まなくて、とても焦りました……

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