番外編1
弟が、あんなに変わるなんて思わなかった。「彼女」のおかげなんだろうね……
僕達は双子の兄弟。顔は瓜二つで、背格好もソックリ。
違うところと言えば、髪の色くらいかな?
性格も良く似ているけど、……弟のほうがちょっと厳しいかもね。
弟は、告白されると「じゃあ付き合おうか……」と言って付き合いを始めていた。
「それでいいの? 稔は本当に、その子のことが好きなの?」
「嫌いじゃないよ。断るの可哀想だし……。付き合っているうちに、好きになるかも知れないだろ?」
僕が「そんな理由で付き合っちゃダメだよ」と言ったってダメだった。そして………
「女の子は勝手だね。『こんな冷たい人だなんて思わなかったわ!』なんて言われても困るよ。僕は元々、こんな性格なのに……」
別れ話を持ち出されて傷つくのは、いつも弟の方だった。
確かに弟は冷静沈着だし、理論的な考え方をするし……優しいけれどもキツイことも言うし、マメに電話やメールもしない。
だからと言って勝手に想像しておいて、勝手に幻滅しないでやってほしい。外面だけじゃなく、内面も見てやって欲しい。
だけど今度の彼女は、弟の内面も好きになってくれたし……何よりも“弟の方から告白した”っていうんだから! 弟を『その気』にさせた彼女は、本当に凄いと思う。
弟があんなに独占欲が強くて、我儘で、意地悪だ―― なんて知らなかったよ。
“人間らしくなった”、というのは少し言い過ぎかもしれないけれど……
兄さんは嬉しいよ。
― End.―