続編
由紀は部屋の明かりが煌々と点いていると恥ずかしがるし、暗闇だと怖がる。
ベッドのヘッドライトを絞って薄暗くすると、安心して僕に体を委ねてくれる。
暗闇が怖いのは、やっぱり奴(初めての男)の所為で………くそ!!
SEXは、痛くて怖いモノなんかじゃない。
由紀が囚われている過去を払拭して、2人で感じ合いたい。
僕は“快感”というものを知らないその体に、いろんなことを試みていた。
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
薄暗い部屋。
ベッドの上で、うつ伏せになった私の背中を……浩一郎さんの舌が這う。
「今日は由紀の体を全部、舐めてあげるよ」
「美味しくないわよ?」
夕食のときに浩一郎さんが笑いながら言ったから、てっきり冗談だと思ってた。
本気だって分かっていたら、あんな返事しなかったのに。
―― 後悔したって、もう遅いけど……
浩一郎さんと共に暮らすまでは、頬や唇にするキスしか知らなかった。
「どんな感じがするか、言ってごらん?」
浩一郎さんは、いつも私に言わせる。どんな風に感じるのかを。
それを穏やかな顔で聞きながら、時には微笑みながら、行為を続けていく……
体の隅々にまでキスをされたときは、くすぐったい感覚の方が多かった。
胸にされたら、キュンとした。
首筋や耳・背中にされたら、ゾクッとした。
足にされたときは、驚いたけれど……ドキッとしてジンとした。
でも、“舐められる”のは……
「動かないで、じっとして。自分の体の変化を感じ取ってほしいんだ…」
背中がゾクゾクしてきて、鳥肌が立ってくる。
くすぐったいのとは、また別の感覚が湧き上がってきて……体がムズムズしてくる。
手足の力は抜けていて、溶けてしまってベッドと一体化したみたいな感じで……ただ体をくねらせて捻ることしかできない状態になってしまっている私。
浩一郎さんの舌が背中から移動してきて耳を口に含んだ、そのとき
「あぁ〜〜〜んッ!」
背中が仰け反って、大きな声が出た。
頭で考えるよりも早く、体が反応していた。
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
「どんな感じがするか、言ってごらん?」
僕は、いつも由紀に言わせる。どんな風に感じるのかを。
第一の理由は……由紀が感じる所を知りたいし、感じてほしいから。
第二の理由は……沈黙の中での行為は緊張させてしまうので、由紀をリラックスさせてあげたいから。
第三の理由は……それを僕に伝えようと一生懸命に言葉を捜しながら、頬を染めて話す由紀が見たいから……。
―― 今は主に三番目の理由で、かな?
やっと、ここまできた。
由紀の感じる所を知ることができて嬉しい。
由紀が感じている姿を見るのが楽しい。
新しい発見ばかりの毎日は面白い。
だが……
なんて感じやすい体なんだろう。
なんて甘い声で啼くんだろう。
「……まだ、背中が……ゾクゾクしてる、の……。私、変に……」
「落ち着いて。大丈夫だから……ね?」
僕の腕の中。息を切らし、泣きそうな顔でしがみ付いている由紀の背中を、ゆっくりと摩りながら……これからのことを考える。
無理強いは、したくない。
怖い思いは、させたくない。
でも僕は―― 由紀の甘さを知ってしまった僕は、いつまで理性を持てるのだろうか……