拍手御礼ss

諦めてくれ

≪康裕のマンションにて≫

「友達には『優しい歯医者さんだよ♪』って紹介されたんだよ?」

「ふーん?」

「だから安心してたのに、アレは……ちょっと怖かったな……」

「優しいのは、兄貴の方だ」

「……お兄さんの方?」

「“優しくない”俺が担当医で残念だったな」

「違うの! そうゆう意味じゃなくて、ただ……」

「悪いが、俺はこういう性格なんだ」

「違うって言ってるのに! ちゃんと聞いてよー」

「何なら“優しい”兄貴に乗り換えるか?」

「なんで!? ……なんでそんなこと言うの!?」

「俺は、兄貴みたいに優しくないから」

「やだぁ……私、センセが好きなのに……」

 

 

 涙目になって必死で言葉を伝えようとする美緒。

 その姿を見ながら、康裕は心の中で呟いていた。

 

 

 こんなに嫉妬深いとは思わなかった。(兄貴に嫉妬するなんて……)

 こんなにサドだとは思わなかった。(美緒の涙が見たいなんて……)

 美緒ごめん。この性格、たぶん治らない。

 諦めてくれ。

 あとで、たくさん甘えさせてやるから。

 「もういい」ってくらい優しくするから。な?

 

 

― End.―

2011.08.24. 拍手御礼より移動.

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