えッ!!…私が!?

(06.香織)

 

 

初出勤した日に、ショック受けまくり状態だった私。

翌日からは「会社へ行かなきゃ!」って思った途端に、お腹が痛くなってきて…
こんな状態が続いて…今日で3日目。

 

それでも休まずに出社しているけど…

何も聞いてなかったような振りして、室長と顔を合わせているけど…

本当は、辛い。

 

 

不調の原因は、妹も知ってるの。

だって…月曜日に帰宅するなり「どうだった?」って聞かれて、私…イキナリ泣いちゃったから…

「カオちゃん、どうしたの!?何があったの!?」

会社でのことを全部話したら、妹はメチャメチャ怒った。

「なんでそんなこと言われなきゃいけないの!?そんな所、辞めちゃいなよ!」

 

 

正直、「辞めようかな」って考えが頭を過ぎったのも事実。

でも酉島さんの顔や、社長の顔、課長の顔、優希ちゃんの顔が浮かんできて…

それに…あんなに頑張って講習を受けて覚えたことを、無駄にしたくないし…

そして何よりも、この私にチャンスをくれた人たちに応えたいと思った。

 

だから頑張っているんだけど…どこまで持ち堪えられるのか、分からない。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

8時20分、いつものように職場に到着。

更衣室で着替えていたら、優希ちゃんが入ってきた。

 

「優希ちゃん、おはよ」

「香織ちゃん、おはよ。…顔色悪いけど、大丈夫?」

「うん、まぁ…」

「あのね、今日から一緒にお昼食べよ?」

「旦那さまは?」

「友だちと行くの、やっと納得してくれて…。だから気にしなくていいからね♪」

「やっと納得…(?)」

優希ちゃんの旦那さまって…ダダをこねるような人だっけ?……まぁいっか。

「ありがとう。じゃあまた、お昼に…ね♪」

「うん」

 

 

そして私は、お昼を食べながら…

優希ちゃんから驚愕の真実を聞かされることになる。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

優希ちゃんに連れられて入った、イタリアンの店。

OLさんは、こんな洒落た所を知ってるんだ〜…と思いながら、店の中を眺める。

レディースランチを2つ頼んだところで「あのね…」と、優希ちゃんが話し始めた。

 

 

「今…清水課長と高峰室長が険悪なのは、香織ちゃんも知ってるでしょ?」

「うん…」

「その原因も知ってる?」

「…私?」

「違うわ、香織ちゃんが来る前からよ。正確には、5月の連休明けからなの…」

 

 

高峰室長は、優秀なプログラマーでもある。

今…その力をソフト開発課の方で発揮してもらいたい会社側と、キーパンチ室の仕事が好きだから他部署へは行きたくないという本人の意見が対立している。

そして……会社側は『室長補佐』という役職を作り、将来の『室長』にするべく育成し、高峰室長をソフト開発課に異動させようと……

 

 

「じゃあ私の所為で、高峰室長が異動しなきゃいけないの!?」

「香織ちゃんが悪いとか、…そんなんじゃないの。高峰さんを異動させたい為に『室長補佐』となる人を採用し、将来の『室長』にと……」

「でも!私が採用されなかったら、高峰さんは…室長のままで居られたんじゃ…」

「遅かれ早かれ、高峰さんは異動することになるわよ」

「だけど…自分の立場を奪う人間に、教えなきゃいけないのは………辛いよね」

「香織ちゃん?」

「だから…私に対して、あんな態度を…」

「え?」

 

そこで私は…先週の顔合わせから始まったことを全部、優希ちゃんに話した。

 

「!…そんなことが…」

「初対面から睨まれて、『私が何をしたって言うの?』って思ったけど…私の存在自体が室長を苦しめていたんだね。あの人にとって、私は疫病神なんだ…」

「香織ちゃん…」

「でも私…だからと言って、仕事を辞めれないよ?…室長を苦しめるって分かってるのに…追い込んじゃうって分かってるのに……辞められない…

「キツイかもしれないけど…香織ちゃんが辞めても、他の誰かが採用される。高峰さんにとっては、同じことが起こるだけよ。それなら私は…他の誰かじゃなくて、香織ちゃんに居てほしい」

「私も優希ちゃんと離れたくない。室長のことは、ちゃんと受け止められるから…大丈夫だよ」

「強いんだね」

「そう?…理由も分かんなくて『私は嫌われてるんだわ〜』なんて悩んで落ち込むよりも、理由が分かってる方が何倍も良いと思うもん。だから大丈夫なの。ね?」

「うん。………お料理、冷めちゃったかなぁ。…話に夢中になって、忘れてたね」

「ホントだ〜(笑) じゃあ…いただきま〜す♪」

「え? 香織ちゃん…」

「保育園で、いつもやってたから癖になってるの。ところで…なんで優希ちゃんが会社の内情とかを知ってるの?メチャメチャ気になるんですけど…」

「香織ちゃん、知らなかった? お兄ちゃんが、社長なの」

「えぇっ!!」

 

ビックリして、スパゲティが喉に詰まりそうになった。(あー苦しかった…)

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

「羽山さん、明日からメインの電源を入れてくれ」

優希ちゃんとの昼食を終え、キーパンチ室へ戻った私に待っていたモノは……清水課長の、ありがたい言葉だった。

 

「えッ!!…私が!? …それって、ホストコンピュータの電源を私に任せるってこと…」

「ああ」

そのとき、優希ちゃんの言葉「補佐を室長に育成して…」が頭を過ぎった。

 

 

育成プログラム、開始!?

 

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