私のカオちゃん― 妹 : 羽山千尋(はやま ちひろ) ―
私の1歳上の姉、羽山香織はメチャメチャ可愛い。 髪の毛は、染めてないのに茶色でフワッとした肩までの長さ。目も髪と同じ色。 ちょこんとした鼻が付いていて、口はピンクのさくらんぼみたいにプックリしてて。 頬っぺもマシュマロみたいで…良い匂いがして、砂糖菓子みたいな感じで……「あ〜食べたいッ!」って思うくらいの女の子だった。 白状すると…私は小学生のときに一度、カオちゃんの頬を舐めたことがある。
で…そのまま育って、今は23歳なんだけど……全然、そんな年に見えないの! 「高校生です〜♪」と言っても、違和感無く通用するんだもの。すごいでしょ?
そんなカオちゃんの嫌な過去は、小学3年生のときに誘拐されたこと…。
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カオちゃんが一緒に遊んでいた私(当時、小学2年生)の目の前で、イキナリ知らない小父さんに手を掴まれて…抱っこされて連れて行かれた。 「やだ――!チィちゃん、チィちゃん――」
あのときのカオちゃんの泣き顔と声は、一生忘れない。 私も大声でカオちゃんの名前を叫びながら走ったけど、追いつけなかった……。 近所の人たちがそんな私たちを見て、警察に通報してくれて、家にも知らせてくれたから…翌日に犯人は捕まったし、カオちゃんも無事だった。
私はホッとしたのと同時に、犯人をぶん殴ってやりたい!と思った。 「あまりにも可愛かったから、つい…」だと!? ふざけんな!! その所為でカオちゃんは、4日間も熱出して寝込んだんだよ!? おまけに…あの時のこと、何も覚えてないんだよ!? 「全部忘れてしまいたいくらい、よほど怖い思いをしたんでしょうね…」 医者にそう言われて、小さかった私が受けたショックは大きかった。 その男の「つい…」が、何の関係も無い私たち家族に暗い影を落とした。 父の母の、あんな苦しい顔は初めて見た。 でも… 「忘れてしまって良かったのよ。トラウマになって残るより、いいじゃない?」 無事に戻ってくれて本当に良かったわ、という母の一言でやっと気持ちが軽くなったの…。
その後、すくすくと成長した私たちは、私立の中・高一貫教育の学校に通うことになった。 何故かというと…父が、学園まで徒歩5分の場所に、家を購入して引っ越したから…そうなったワケで…。
あの事件以来、私と父は、カオちゃんに対して過保護になりました。
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カッコイイ父親に似て美人の私と、母親に似て可愛いカオちゃん。 …容姿と一緒に、それぞれの性格もソックリ受け継いでいるけどね…
私たちは桜花爛漫学園でも評判の姉妹だったけど、カオちゃんが中等部の途中から視力が落ちて眼鏡をかけるようになってからは…あまり騒がれることは無くなった。 その理由は…私がワザと、カオちゃんの顔を隠すような眼鏡を選んだから…
意地悪な妹と思われるかもしれないけど…そうでもしないと、カオちゃんを守れない。 事実、あんなに群がってた男の子たちが…眼鏡をかけるようになった途端に、カオちゃんから離れて行った…。 でも私は、それで良かったと思ってる。
もう、「可愛いかったから、つい…」なんてことは絶対に起こってほしくない! カオちゃんは外見だけじゃなく、中身まで可愛いくて、とっても頑張り屋さんで…。 その良さが分からないような男には、任せられないわ! それまでは、私が守る。
これは…あの日、父と交わした約束なの。カオちゃんは、何も知らないけどね♪ |
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