なぜか気になる

― 営業課 ： 榊栄太（さかき　えいた） ―

「今度キーパンチ室に、新しい子が入ってくるぞ！」

「もう６月だぞ！？こんな時期に、か？」

「確か、人事の酉島課長が連れてきた子だって聞いたけどな…」

「人事課長が直々に！？ありえねー！！」

「だから社長が面接したんだってさ」

「どんな子なんだ？」

「そこまではオレも知らねぇよ！」

「でも高峰室長の補佐だって言ってたぞ」

「あの人に『補佐』なんて必要ねぇだろ？」

「じゃあ……？？」

『あの人事課長が、女の子を連れて来た！』

今まで無かった事件に、オレたち営業課の中では様々な噂が飛び交った。

酷いものは「人事課長の彼女」や「社長の彼女」、「誰かの愛人」？…バカバカしい！

　…もちっとマトモな考え方ができねぇのかよ…

ウチの課で彼女に会ったのは清水課長だけ。

そして今、彼女は講習に行ってて…来週の月曜日から出社してくるらしい。

どんな子が来るのか、見てやろうじゃないか！

そのときのオレは、そう思っていた。

週が明けて、月曜日。

羽山香織ちゃんを見た奴らの感想は、「なんだ、メガネザルじゃんかよ」だった。

正直、あの眼鏡はダサいと思う。

でも…なぜか気になるんだよな〜

あのフワッとした茶色い髪の毛、ありゃ絶対染めてねぇぞ？

よく見たら、あの鼻も口も可愛いし…

頬っぺも柔らかそうで、背だって……

もしかしてオレ、ちっこくて可愛いのが好みかも…？