愛する人と共に

(Wedding 顛末記 1)

 

 

「ねぇカオちゃん…ここの家って、すごいよね…」

「うん。テレビの『お宅拝見♪』とかに出てきそう」

 

ある休日。

祖父母と連絡を取った母に連れられて…私と妹は電車を乗り継いで、母の実家へと向かった。

駅から歩くこと10分。

大きな門構えの和風建築の屋敷(と言っても過言ではない家)にビックリ!

メイドさんが出てきて対応してくれたことに、またビックリ!

そして…立派な床の間が在る座敷に通されて、固まって正座している私と妹。

そんな私たちとは対照的に、懐かしそうに部屋を見渡している母……

 

 

   両親を事故で亡くした父は、知り合いの社長に引き取られた。

   そこの娘(=母)と出会ったのは、互いが高校1年生と小学6年生のとき。

   好きになって…愛を育んで……母が短大2年生のときに妊娠が発覚!

   そして大騒動に!!!

 

「…父が許してくれなくて…結局、家を出たの。短大も中退したわ…」

「え、中退したの!?」(香織)

「卒業してから結婚したんだと思ってた…」(千尋)

 

 

祖父母が来るまでの間、母から昔の話を聞いていた私たち。

祖父母と涙の再会をした母、そして感動的な初対面をした私たち。

これまでのことを互いに話し、私の結婚話も出て…穏やかに時は過ぎていった。

私が大声をあげて、「うそぉっ!!」…と叫ぶまでは。

だって…

まさか祖父がウチの取引会社の、社長だったなんて知らなかったんだもん!!

披露宴が『孫のお披露目を兼ねての宴』になるなんて考えもしなかったもん!!

 

「孫が増えて嬉しいから自慢したい」ってゆう、祖父の気持ちも分かる。

「白無垢姿もドレス姿も見たい」ってゆう、祖母の気持ちも分かる。

でも!

いくら「娘には、してやれなかったから」って、そんな派手にしなくてイイのに〜!

   私たちの結婚式なんだよ?

   当人に任せてくれないの?

会社関係の『付き合い』とかで、違った方向へ行っちゃうのはイヤなの。

 …そうゆうところ、ちゃんと分かってほしいんだけどな…

 

 

私は今、母に「祖父母と連絡を取って」と頼んだことを…少しだけ後悔してます。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

「今度の休みに、祖父母に会ってくるね♪」

 

そう香織から聞いていたが…

まさか香織の祖父が、取引先の社長だったとは!

香織の叔父が、俺の中学・高校時代の悪友だとは!

 

『世の中は狭い』とは、よく言うが……こんなに狭いとは思わなかった。

奴の苗字と同じ社名だな、とは思っていたが…俺の悪行(法律には触れてないが)を全て知っている奴が、香織の叔父!?

 …奴と姻戚関係になるのか…

 

 

奴らが俺たちの式や披露宴に口出しをしてきて、当初の予定が変わっていく。

来週の日曜日は、俺の両親に会う。

 …香織を「結婚相手だ」と紹介したら、どんな反応をするだろうな…

 

 

 

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