愛する人と共に

(Wedding 顛末記 4)

 

 

≪衣装合わせに出かけたけれど…≫

 

 

「これがいいんじゃないかしら?」

「こっちの方が香織に似合うわよ?」

祖母と母が互いに衣装を持ってきては、私の体にあてる。

 …疲れたなぁ…

 

琢磨さんの衣装は既に ―― 50分も前に ―― 決まっていて。彼はソファに座って雑誌を読みながら待ってくれているんだけど……え? 手が動いてない!?

『ページを捲ってない』ということは『ちゃんと読んでない』ということで…。

 

 …はぁ…

 

琢磨さんの我慢も限界なんじゃないかと思うと、また溜息が出てきた。

祖父の言ったとおりにしていた方が良かったの!? なんて後悔したって遅いのは分かってるんだけど、でも……こんな状況だと、つい考えてしまう。

 

 

ごめんなさい琢磨さん、あと一着決めれば終わるから。

もうちょっと待っててね。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

式と披露宴の日が決まると、香織の祖父は「明日にでも採寸しよう」と言った。

 

「採寸って?」

「結婚式の着物と披露宴のドレスを誂えるんじゃよ。今から楽しみじゃのぉ…」

聞いた香織は、開いた口が塞がらないほど驚いている。

俺は「馬鹿か!?」と言いたかったが…何とか堪えた。

着物もドレスも、その日限りの代物。何度も着る機会なんて無い。

いくら姻戚になるからとはいえ、―― 披露宴パーティーだけは出るが ―― こちら関係のパーティーなんて出たくない。

そんな衣装、持っていたって無駄だろ?

 

「必要ありません」

俺がそう答えると、香織も同じ考えだったようで

「お祖父ちゃん、ありがとう。でも勿体無いから…貸衣装の方がいいと思うの…」

と言ってくれた。

それから俺達は、香織の祖父を説得した。結果、『一緒に行って、香織の祖母と母親の意見を取り入れる』ことを条件に、漸く了承。

一仕事終えたような…それ程、疲れを感じた日だった。

 

 

 

 

そして迎えた今日。

今になって「あんな条件、呑むんじゃなかった!」と後悔している。

   衣装くらいさっさと決めればいいものを…

   なんでこんなに時間がかかるんだ!?

 

雑誌を手にしても、読む気さえしない。

 

 …退屈だ…

 

 

 

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