愛する人と共に

(Wedding 顛末記 9)

 

 

≪結婚式場にて(2人の気持ち)≫

 

 

イキナリ琢磨さんに抱きしめられ、頭の中がぽわ〜んとなっていた私は

「このままじゃあ始められませんよ?」

神父さんの咳払いと共にされた注意で、漸く我に返ることができた。

あまりの恥ずかしさに顔が真っ赤になって何も言えない私。

なのに琢磨さんは

「すみませんでした。お願いします」

なんて落ち着いた声で対応したの。

私ばっかりドキドキさせられてる! って思ったけど…琢磨さんの心臓の音も煩いくらいに聞こえていたから、安心した。

 …琢磨さんも私と同じなんだ…

 

 

 

もう入籍は済ませている。

けれども誓いの言葉を言った瞬間に、『この人と結婚した』というのを皆に認めてもらえたような気がした。

キスだって何度もしている。

けれども誓いのキスは―― 唇に軽く触れるだけのものだったからか―― とても神聖なもののように感じた。

 

 

私は、ずっと琢磨さんと共に歩む……

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

「このままじゃあ始められませんよ?」

神父に咳払いされて、漸く我に返ることができた。

周りを気にせずに行動することはあったが、それは計算した上での事だった。

しかし我を忘れて行動してしまう、などどいうのは以前の俺には無かったことで…

 …香織と付き合ってから、だよな…

 

「すみませんでした。お願いします」

なんとか落ち着いた声を繕って対応したものの、俺の心臓は煩いくらいに音を立てていて……香織には隠しようもなかった。

 

 

 

既に入籍は済ませている。

けれども誓いの言葉を言った瞬間に、紙切れ一枚の重みが更に増したような気がした。

何度も味わった甘い唇…。

けれども誓いのキスは―― 純白のドレスに身を包んだ天使を汚したくなくて―― 軽く触れるだけにした。

 

 

俺は香織を守り、そして共に生きていく……

 

 

 

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