愛する人と共に

(Wedding 顛末記 11)

 

 

≪ホテルにて≫

 

 

祖父からのプレゼントは、まだあった。

それは披露宴会場の上階にある―― ロイヤルスイートという名の―― 豪華な部屋で…。

「うわぁ…」

その広さや内装、家具の豪奢さに感激した私は感嘆の声を上げた。

けれどもそれは案内係の人が居るまでの短い間だけ。

2人きりになった途端に抱きしめられ、開いていた唇は深いキスで塞がれる。

琢磨さんから与えられる心地よさに意識が朦朧とし、体から力が抜けていき……

 

「おい、…香織?」

 

私はそのまま、夢の中へと旅立っていった…。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

キングサイズのベッドで、気持ち良さそうに眠る妻。

その隣に横になり、髪を撫でながら眺めている俺。

漸く2人きりになれたというのに、しかも抱く寸前になって眠られてしまったというのに……心の中は、何故か穏やかだ。

 

 

今日の香織は―― 慣れないヒールを長時間履き、ジジイ連中に笑顔で挨拶して回り―― 身体共に、随分と無理をしていたのかもしれない。

『折詰にして持って帰りたい』と主張していた料理さえ食えないくらい疲れている。

 …かといって、このまま朝まで眠っていられても困るが…

 

男の事情は厄介だと思いながらも、ふと「香織が起きたときの第一声は何だろうか」と想像してみる。

   「お腹が空いた」と言って、空腹を主張するのか

   「ごめんなさい」と言って、眠ってしまったことを謝るのか

まさか寝ぼけて「ここは何処?」などと言うことはないだろうが……その一方で、香織なら有り得るかもしれないと思えてくる。

 …それだけは勘弁してくれよ、な?

 

 

 

俺も疲れていたのだろうか。

様々なことを考えているうちに……愛する妻の隣で、いつしか眠っていた。

 

 

 

 

 

 

その後

 

 

 

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