言わせてほしい

（披露宴での、関係者たちの呟き）

≪『(株)T&F』の面々≫

「あ〜ぁ、香織ちゃん結婚しちまったんだよなぁ……。オレたち仲良くなってたのに、横から課長が攫（さら）って行くんだもんな〜」

　営業課 ： 榊栄太（さかき　えいた）

「羽山さんを見つけてきたのは、私ですよ？　私がスカウトしたからこそ、この会社に彼女が居るんですからね！
…あんな子は滅多に居ませんよ。これまで様々な披露宴に出席しましたが、今回ほど喜ばしいと思ったことはありません」

人事課 課長 ： 酉島尚吾（とりしま　しょうご）

「いや〜、おめでたいですねぇ。私には子どもが居ませんから、ウチの女性社員たちが娘のように思えましてね。時々、父親の気持ちを味わっているんですよ。今日は本当に嬉しいです。可愛い娘（羽山さん）の晴れ姿を見ることができて…」

総務課 課長 ： 大橋泰造（おおはし　たいぞう）

「あの２人を傍で見てきたけど、彼女に対する執着振りは尋常じゃなかったよ。
指導役は清水課長にしかできない、というのは分かってるんだけどね。『そこまで付きっ切りで指導しなくてもいいんじゃないですか』って…何回、意見したことか」

営業課 係長 ： 斎木俊信（さいき　としのぶ）

「そうだったわね…。課長は無意識で行動していたんでしょうけど、キーパンチ室の皆にはバレバレだったわよ？」

キーパンチ室：渡部満智子（わたべ　まちこ）

「羽山さんの面接をしたとき、『清水さんが彼女と関わって、少しでも良い方向へ変わってくれれば』と思っていたんだ。でもまさか、あの清水さんをここまで変えるとはな！　…この俺でも想像つかなかったぜ」

社長：藤堂俊介（とうどう　しゅんすけ）

「おまえの動物的カンでも想像つかないんだったら、誰も予想できなかったろう。『少しでも』な〜んて思っていただけでも、優秀だと思うぞ？」

副社長：藤島庸一（ふじしま　よういち）

「清水さんが『できるなら、監禁したいくらいだ』と言ったときは、本当に驚いたよ。大学時代は『無表情・無感動・冷血王子』なんて呼ばれるほどの人だったのに」

開発課 課長：徳田義人（とくだ　よしひと）

「そんな人を……香織ちゃんが変えたんだね……」

総務課：徳田優希（とくだ　ゆうき）

中には、愚痴っぽいのもあったけど…（苦笑）

「結婚おめでとう！」