オトメゴコロ♪
「香織…」 扉を開けて目が合った途端に、私の名前を呼びながら微笑んでくれる課長。 それって、とっても嬉しいんだけど…なんか恥ずかしい。 親友から呼ばれるのとは違って、とっても特別なモノに聞こえるんだね。 …新発見! って感じだな〜
「1人か?」 そう聞かれてスプーンを置き、「はい」と答えた。 課長が近づいて抱きしめてくる。 「母は午前中ずっと居てくれて、さっき帰りました。妹は夕方から来てくれます」 「そうか。で、調子はどうだ?」 あまりにも顔が近すぎて、どう対応したらいいのか分かんない。 「えぇっと…あの…離してもらえませんか? まだ食べてる途中なので…」 「そうか…」 それからの課長の行動に、私はビックリして声も出せなかった。 …なんで課長がベッドに座るの!? …で、私は横抱き?
「自分で食べますから…」 何度も言ったんだけど、課長はスプーンを持ったまんま。 「ほら、口を開けろ」って…………で結局、食べさせてもらったの。
今ココに看護師さんが入って来たらどうしよう、なんて思いながらの食事はもう…味なんて、全然分かんなかった。 食べ終わると、そのまま唇を舐められてキスされて…それがディープキスへと移行して……体中の力が抜けていって……
課長が「ごちそうさま」って離れたときには…トロンとした目で、ぽーっとなってた。
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
「あ…ありがとうございます」 課長に食器まで片付けてもらって、ものすごーく恐縮した。 でもまたベッドの上で、同じ体勢に戻ってるから…目のやり場に困ってしまう。
切り傷は、一箇所だけ縫ったけど…その他は、ガーゼや絆創膏で済んだ。 火傷と打ち身は、処置をしてから包帯を巻いている。 怪我は左側の手足に集中していて、目につく部分に包帯や絆創膏があるから…とても痛々しく見える。
「傷は痛むか?」 「痛いですけど…なんとか歩けてます」 「いつ出社できる?」 「月曜の午前中に退院しますけど、出社するのは水曜からでいいですか? 少しでも包帯が取れた方が良いと思うんです。…コレだと皆に心配かけちゃうし…」 包帯だらけの左腕を、課長に見せた。
「分かった。月曜は俺が迎えに来よう。此処で待ってろ」 「え?」 「水曜日以降も、だ」 「はい?(水曜日以降も、って…)」 「こんな状態で電車に乗せられる訳ないだろうが! 家で待ってろよ」 「課長と一緒に、車で出勤するんですか!?」 「ああ」 「そこまでしていただかなくても…あの…ちゃんと自分で行けますから…」 「嫌か!?」 「そんなことありません、嬉しいです! でも…悪いし、恥ずかしいし…その…」 「俺たちは付き合っている。互いの気持ちも確認した」 「…はい」 「なら遠慮なんかするな、恥ずかしがるな。俺の好意を受け取れ」 「はい♪」
心の中に、課長の温かい気持ちが流れ込んできたようで…とっても嬉しかった。
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
「俺は…今まで、いろんな女と付き合ってきた。とはいっても、他人に褒められるようなモノじゃなかったな。『どうでもいいや』と思いながら付き合ってたよ…」 「!! ……」 ドキッ! とした。 たぶん、そうだろうと思ってた。たくさんの女の人と付き合ってただろうな、って。 でも課長の口から直接、こんな話を聞かされると…心がチクッと痛くなる。
「今まで自分から『してやりたい』『護りたい』と思ったことなんて無かったんだ。香織が初めてだよ、俺を…こんな気持ちにさせたのは…」 お前だけだ、と言って課長が…私を力強く抱きしめた。 「課長…」 「お前だからこそ、変わることができた。俺は…そんな香織が愛しくて堪らない」 髪の毛にキスされた。 「か、ちょ…」 「これからは自分の気持ちを、自分がしたいことを、そのまま言動に移すからな」
「かちょう? (なんか…口調が変わってませんか?)」
「『課長』じゃなくて、名前を呼ぶように」 「か…えっと………た、くまさん?」 「俺は『熊さん』か!?」 いきなり抱擁を解かれて、顔を覗き込まれた。(目が怖いッ!) 「違います、ごめんなさい! た…琢磨さんッ(お願いだから睨まないで!)」 「よし」 「でも、あの…会社では呼べません。やっぱり『課長』じゃないと拙いですよ?」 「仕方ないな…。その代わり、プライベートで『課長』と呼んだらペナルティだぞ」 「えぇ!? ペナルティって…なんで課長がそんなことを…」 「1つ目」 「そんな、課長〜〜」 「2つ目」 「か、…琢磨さん、酷いです! そんなこと急に言われたって、無理です。呼び慣れた方を呼んじゃうに決まってるじゃないですかぁ…。出社するまでに、ちゃんと家で練習しておきますから。ね? さっきまでのはカウントしないでください」 「水曜日からはカウントして良いんだな」 「え! そうじゃなくてペナルティ自体を、無かったことにしてほしいと…」 「決定事項に変更無し。OK?」 「ずるい…」 「そうでもしないと、いつまで経っても俺は『課長』のまま、だと思うぞ。違うか?」 「…………………そうですね。…OKです…」 「交渉成立。さて、何をしてもらおうかな♪」 「…カウントするのは水曜日からですよ?」 「決まったようなもんだ。楽しみだな」
そう言いながら笑った課長が意地悪に見えたのは、目の錯覚…じゃないと思う。 |
★★ブラウザの『戻る』で戻ってください★★
- An original love story - *** The next to me ***