秘密=内密

(優希side)

 

 

明日は23歳の誕生日♪…という、11月29日のこと。

 

「もう7時過ぎてるよ。そろそろ終わりにして、帰ったら?」

久しぶりに残業していた私は、係長に言われて初めて時計を見た。

こんなに時間が経っているなんて思ってなかったから、もうビックリ。

「あ、もうこんな時間なんですね…。お先に失礼します。お疲れ様でした」

 

 

『株式会社 T&F』はビルの3階、全フロアを借りている。

エレベーターに乗って1階で降りて、外へ出ようとしたとき…表通りに副社長の姿が見えた。

 

「副社長、お疲れ様です。お帰りになったとばかり思っていましたが?」

今日の予定は、全部終わったハズなんだけどなぁ…

と思って声をかけながら、通りに出た。

「ん?ちょっと野暮用でね」

いったい何なんだろ?と思って、首を捻って考えていると

「優希ちゃんを食事に誘おうと思って、待ってたんだ。明日、誕生日だろ?」

「副社長、言葉が…」

「もう仕事は終わったんだ。今からは、プライベートタイムだよ」

「プライベートタイム?」

「そ♪」

「…わかりました。じゃあ……庸一さん、ありがと♪私の誕生日、覚えててくれたんだね。とっても嬉しいな〜」

「姫の誕生日くらい、ちゃんと覚えてるさ」

「うわぁ〜〜久しぶりに『姫』って言われちゃった〜」

照れてしまって頬がピンク色になり、慌てて両手で押さえる。

 

「そりゃあ優希ちゃんは、我らの『姫』だからな。…明日は家族で御祝いするんだろ?」

「そうなの。お兄ちゃんがホテルのレストランを予約してくれて…」

「だから今日、誘ったんだよ。それでは姫、行きましょうか?」

「はい喜んで♪」

私は、庸一さんと腕を組んで歩き始めた。

 

 

その一部始終を、人に見られていたなんて……知らなかった…。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

翌11月30日は、私の23歳の誕生日。

残業も無くって、定時に終われてラッキー♪

 

ウキウキしながら帰り支度をして、待ち合わせ場所へと急いだ。

そこで待つこと10分。と……

「キャーッ!」

背後から、いきなり抱きしめられた。

「おいおい優希、俺だよ」

「社長ぉ……ダメじゃないですかぁ。こんなところ、会社の人に見られたらどうするんですか!?」

「別にいいけど?」

「…………」

そんなアッサリ言わないでよ!

 

「…バレちゃうよ?」

「バレてもいいさ♪」

「もぉ〜〜…」

「そんな膨れた顔するな。…Tホテル行くぞ」

「はぁ〜い」

私は社長と共に歩き出した。

 

 

そのときは、あまりの嬉しさに舞い上がってしまってて。

その様子をビルの陰から見ていた人が居たなんて、全然気づきもしなかった。

 

 

 

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