衝撃!! 喪失

(優希side)

 

 

「君は……」

顔を前に向けたまま黙って運転していた係長が、急に口を開いた。

「はい?」

「……単刀直入に言おう。君は…社長と副社長とは、いったいどういう関係なんだ?」

「!!!!」

思わず係長の横顔を、凝視した。

 

なんで!?

「……どうして、そんなこと…聞くんですか?」

「君は誕生日の日に、社長と仲良く帰っていた。その前日には副社長と…。これはどういうことなんだ?」

 

見てた…の?

 

「…社長と副社長は、何と仰ってましたか?」

「そんなこと聞けるワケないだろ!…僕は君の口から聞きたいんだ!」

係長の口調が厳しいものに変わって、ビックリしたけど…

「お二方が何も仰らないのなら、私の口からは何も答えられません」

「何故!?」

「……そういう約束だからです」

本当のことを知っているのは…会社の中でも、ほんの僅かな人たちだけで…

社長が何も言ってないモノを、私が勝手に言えるワケがない。

「ですから…これ以上のことは、何も申し上げることはできません」

「社長は…いや藤堂は、君と藤島のことを知っているのか!?そして藤島は、君と藤堂のことを知っているのか!?」

 

私は、自分の耳を疑った。

この人は、いったい何を言ってるの!?

私が2人を騙しているとでも言いたいの?

二股かけてる、って……

そんな女性だと思われてる…の?

ウソ…でしょ?

自分の好きな人に、こんな誤解をされるなんて…

こんな悲しいことって、ある…の……?

 

 

私はもう呆然としてしまって…係長が言ってることも耳に入らない状態で。

いつ車が停車したのかさえも、判らなかった…

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

カチャ!

「え!?」

シートベルトが外れた音を聞いて、我に返った。

 

 

係長が圧し掛かってくる。

「何をするんですか!」

「何って、今さら…だろ?」

いくら経験が無くても、この先のことは分かる。

「ヤ…ダ……やめてください!!」

必死に抵抗しても、力の差は歴然とあって。

 

 

私は……………

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

マンションの玄関を入ってすぐの廊下に蹲り、震える自分の体を抱きしめていた…

 

 

好きな人に、とんでもない誤解をされ

力ずくで体を開かされ

初めてを奪われた挙句

くそッ!バージンだったのかよ…

…これで傷つかない人は…居ないよね?

 

あれから…夢中でコートの前を合わせ、係長の車から飛び出して

運良く通り掛かったタクシーに乗り…

自宅に戻った。

 

信じられない。

信じたくない。

けど…あの引き裂かれるような痛みと、異物感は…まだ体に残っていて……

否応なしに、現実を突きつけられる。

 

ファーストキスも、まだなのに…

 

枯れていたと思っていた涙が、溢れてきた。

 

もう…何もかも…イヤ……

私はその場で、意識を失った。

 

 

 

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