過去。部下

(義人side)

 

 

僕は友人に誘われて、この会社に来た。

 

大学時代。

僕たちはいつも何かしらのソフトを作っては、それで遊んでいた。

それが、ひょんなことから世に出て売れて……『趣味』や『遊び』から離れたモノになった。

友人たちはソフト開発が専門で、僕はシステム開発が専門だった。

「俺たち、起業しようぜ!」

「ソフトとハードの両方が揃ってるんだから、イイんじゃないか?」

「じゃあ今から準備するか…。卒業したらGO!だな」

 

僕たちは、時間も忘れて話し込んだ。そう遠くない未来が、輝いて見えていた。

あの日、お袋が過労で倒れるまでは…。

 

 

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父親は、僕が中学生のときに亡くなった。

それ以来、お袋が働いて生計を立てていたけれど……無理が祟ったらしい。

少しは助けになるかと思って、奨学金を受けてはいたが…

お袋は元気になるのか?

いつまで入院するんだ?

多少の蓄えはあるけれど、入院費までとなると…家計が苦しくなってくる。

おまけに1歳下の妹までが、骨折して入院してしまった。

僕は、どうすれば………

 

結局、僕は友人に事情を話し、バイトを増やした。

そして…企業へ就職することを決めた。

「また機会があったら誘ってくれよ」

友人たちに、そんなことを言って別れたが…

 

 

お袋も元気になった今、しみじみと思う。

あの時に交わした言葉が、現実のことになるとは!…ね♪

 

 

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「本日、10月1日から此方に配属になりました、徳田義人です。役職は係長ですが…」

こんな感じでいいかなと思いながら、挨拶をする。

課の連中の顔を一通り見て…1人の女子社員が目に留まった。

 …アイツの妹に、面影が似てる?

 

大学時代に一度だけ自宅に行ったことがあるが、やたら可愛い妹だったと思う。

僕の妹とは雲泥の差というか……。(僕の妹には悪いけど)

「どうしてアイツに、あんな可愛い妹が!?」

これは、僕たちの間では『七不思議』のうちの一つだったほどだ。

だが…

 

「…この春に大学を卒業しました、池永優希です。よろしくお願いいたします」

「池永…優希?」

名前は同じだけど、姓が違う。

別人なのか!?……そう思っていた。

 

 

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採用されてから半年ほどしか経っていないのにも関わらず、彼女…池永さんの働きぶりは、他の部下よりも群を抜いていた。

 

僕たちの部署が、影で「何でも屋」と言われているのは知っていた。

池永さんは総務課の仕事をこなしながら、副社長のスケジュール管理までも! しっかりとやっている。

 

僕は、良い部下に巡り合えたことを…とても喜ばしく思っていた。

 

 

 

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