Teddy Bear  (10000 HITS 御礼小説)

    (1)

 

 

初めて会ったのは、得意先の社長に誘われて行ったコンサート会場だった。

俺は客席に座っていて、彼女は舞台で…オーケストラの団員として、フルートを演奏していた。

 

 

それ程クラシックに詳しい訳じゃないが、コンサートへは、何度か足を運んでいるし…知っている曲も、結構あると思う。

プログラムには聴いたことのある曲目が書いてあり、俺は楽しみにしていた。

だが演奏が始まり、彼女に目が留まった途端に

 

一瞬、全ての音が消えた。

 

不思議なことに、彼女の周りが輝いて見えた。 

金色に近い茶髪だからかも知れないが、彼女はフランス人形のようだった。

他の団員たちが真剣な目で演奏していたのに対して、彼女は…とても生き生きとした目で、本当に『音』を楽しんで演奏していた。

彼女の表情から、目が離せない。

彼女の「嬉しくて楽しくて仕方がないの♪」という声が、聞こえてくるようだった。

 

 

明るい曲調も相まって、いつもより以上にコンサートを楽しめた俺は

「嬉しいですねぇ。お誘いした甲斐が、ありました」

と相手に言われたくらい、上機嫌だった。

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

二度目に会ったのは、電車の中。

大きな鞄と共に楽器(フルート)のケースも持ち、周囲の人に当たらないようにと気遣っている姿に好感を持った。

 

 

彼女は、俺のことを何も知らない。

だから俺は、存分に彼女を観察することにした。 (ストーカーじゃねぇぞ!)

年齢は20歳くらいで…身長は相当低い。 (あれじゃ150cm無いな)

全体的に、ぽっちゃりとした体型。 (痩せてるよりイイかも♪)

色白で、肌理(きめ)が細かそうだ。 (ぷにぷにと、触り心地が良さそうな…)

!!!

 

ヤバイぞ俺! こんなこと考えてるのがバレたら、えらい騒ぎになるぞ!

それとも俺………

惚れた!?

 

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 

三度目に会ったのは、ウチの会社が入っているビルの中。

大きなダンボール箱を抱えた彼女が、同じエレベータに乗ってきた。 (♪)

 

 

ここまで来たらもう『運命の出会い』じゃないかッ!

よし、気合を入れて行くぞ〜

だが…今まで姿も見たこと無かったのに何故? …と思って、ふと気がついた。

そういえば…

   ●■町に在った楽器店が古くなったから解体する、って言ってたよな

   確か音楽教室だけが、このビルの6階に引っ越してくる、って……

ということは、彼女は教室の先生!?

 

 

あれやこれや考えているとき、急にエレベータが ガクン! と揺れた。

「キャァッ」

その拍子にダンボール箱が、彼女の手から滑り落ち…俺の足の上に ドスッ! 

「痛ェッ!!」

「すみません! 大丈夫で……じゃないですね。どうしましょ、私…」

 

顔色を変えて困っている彼女には申し訳ないが、俺にとっては好都合。

こんなチャンスは絶対に逃さない!

俺は痛む足を押さえながら、心の中では小躍りしたいくらいに喜んでいた。

 

 

 

…俺たちの本当の出会いは、このエレベータから始まった…

 

 

 

 

ちなみに… 俺=藤堂俊介(「偽りと真実」お兄ちゃん)、彼女=中山純(「好き…の気持ち」じゅん先輩) …です

Thanks♪ TOP    next →

- An original love story -  *** The next to me ***

inserted by FC2 system