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私が勤めている音楽教室は、駅から少し離れた場所に建っている『●×楽器』と大きな看板を立てている、7階建ての自社ビルの中にある。 母が「生まれる前から在ったわよ?」というビルを ―― 古くなってきたし、耐震的に問題アリと言われて ―― 今年、新しく建て直すことになった。 (楽器やCDや楽譜や譜面台とか)売れる物は売って処分し、残った物は他の支店へ運ぶ。そして音楽教室は、駅前ビルの6階に引っ越すことに…。
あの日。 引越しのダンボール箱を抱えて駅前ビルのエレベータに乗った私は、ガクン! あろうことか、一緒に乗っていた男性の足の上に落っことしてしまった。
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「痛ェッ!!」 「すみません! 大丈夫で……じゃないですね。どうしましょ、私…」
乗っていたのは私とその男性、2人だけだった。 その人は背が高くて横幅もあって、逞しい感じで…「私なんて片手で潰されそう」 大きな声で「痛ェッ!!」と言われたときは一瞬、息が詰まりそうになった。
とんでもないことしちゃった、どうしよう! 病院に行かなきゃ! 診てもらわなきゃ! 治療費だけじゃなく「慰謝料寄こせ!」なんて言われたらどうしよう! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい… そんなことばかりが頭の中を占めていて、もう必死で謝っていた。
箱の中身は楽譜だけど、数が多いから半端なく重い。それが足を直撃したんだから、相当痛いはず。(私だったら、足が腫れて歩けなくなると思う)
なのにその人は 「泣かなくていい。…俺は大丈夫だ」 痛む足を押さえながら、そう言ってくれた。 「…え…?」 自分でも気付かなかったんだけど…涙を浮かべながら謝ってたみたい。 そんな優しい言葉をかけられるなんて思っていなかった私は、それまでの緊迫感がプツリと切れて安堵したと同時に…堰を切ったように泣き出してしまった。
それから彼は… 自分が降りる予定だった3階にも降りず、 (足が痛いだろうに)元凶であるダンボール箱を持ち、 まだ泣き止めない私に付き添って、6階の教室まで来てくれた。
『大柄で怖そうな部外者が、泣いてる講師と共に入ってきた!』もんだから、居合わせたスタッフ全員がギョッとして、その場の空気が凍ってしまったけど…… 私が(泣きながらも)懸命に事情を説明したら、理解(=安心?)してくれた。
「大変申し訳ありませんでした。治療費は、こちらへ請求してください」 教室の責任者も、そう言って頭を下げて謝ってくれた。 でも彼は 「もともと頑丈にできてますから、大丈夫ですよ」 と答えて、私が泣き止むまで傍に居てくれた。
痛い目に遭わせた挙句、泣いてしまった私。 彼には仕事があるのに、泣き止むまで付き合わせて とんでもない迷惑をかけて……
なのに、そのときの私は、そこまで全く頭が回らなくて。彼が帰ってしまってから
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彼から名前と会社名は聞いていたから、「お詫びに食事をご馳走させてください」と私から会いに行って、誘った。 『男性を食事に誘う』だなんて初めてのことで、とってもドキドキした。自分でも大胆だったと思うけど、でも…彼には、精一杯のことをしたかった。 勤務先は同じビルだから顔を合わせることもあって、挨拶も交わすようになり…彼から食事に誘われたりして……
私は彼の人柄に、どんどん惹かれていった。 |
- An original love story - *** The next to me ***