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 とっても楽しかったクリスマス、家の手伝いをして慌しく過ぎていった年末、家族3人で行った初詣……

 あっという間に冬休みが終わって3学期が始まった。3年生は自由登校になる。 

 

 1月末には卒業式がある。

 2年生は全員が『在校生代表』で、式に参加するんだけど……1年生は自由参加。
式に参加するも良し、講堂の外で見送るだけでも良し、休んでも良し〜
(でも事前に担任に「参加します」って伝えておかないと、座席が無いの) 

 吹奏楽部は……部員が多かった頃は、校歌斉唱と卒業生の入場時と退場時に演奏してたんだって。

 でも今は部員が少ないから、3年生が引退しちゃった後は……できないの。

―― 私たちの演奏で、先輩たちを送り出したかったな……

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 今の時期、吹奏楽部は暇かというと……実は、そうでもない。 

 私は美香子先輩―― 「『千尋先輩』って呼ぶんなら、私も『美香子先輩』って呼んでよ〜」と有田先輩に言われて―― と組んで、クラリネット二重奏の曲を練習してる。

 真紀は中等部のサックスの子たち2人と組んで、3人で練習してる。

 異なる楽器同士で組んで練習してる人も、1人で練習してる人も……

 

 で、その成果を『ミニコンサート』という形で発表するの。

 

 私たちは、出演者と観客を兼ねていて…いい加減な演奏なんてできない!

 仲間からの突っ込みは半端じゃなく鋭くて、容赦がなくってビシバシと……(汗)

 だけど人前で演奏する恥ずかしさを克服できるし、真剣に演奏に取り組めるし、他の人の演奏を聴くのも勉強になるし……って、良い所ばっかりの練習方法。

 当日のプログラムを見るまでは、曲目は分からない。お互いに秘密。

 それぞれが違う場所で練習するもんだから、「どんな演奏するんだろ?」ってドキドキワクワク! とっても楽しいの。

 

「これって誰が考えたんですか? 凄いですよね!」

 興奮も隠さずに、美香子先輩に言ったら

「稔先輩なのよ。『少しでも上達したらいいと思うし、楽しいだろ?』って言って」

「稔先輩が……」

 さすが!

でも稔先輩、卒業しちゃうんですよね…… あ!」

「裕美ちゃん!? あなた、稔先輩のこと…」

 慌てて口を押さえたんだけど、バレちゃった。

 

「美香子先輩、内緒にしててください! お願いします、誰にも言わないで」

「分かってるわよ。でも……そっか。納得。で、このことは他に誰か知ってるの?」

「真紀と……千尋先輩が知ってます」

「じゃあ私も仲間に入れてもらおうかな〜」

「仲間、って…?」

「『裕美ちゃんを見守る会』の、な・か・ま♪」

「そんなの作ってないですよ……」

「私が作るから」

「先輩?」

「表立ったことは、しないけど……裕美ちゃんがピンチのときは助けるし、3人で連携して守るから。ね、イイでしょ?」

「え……でも……」

 

 結局、美香子先輩に押し切られて『見守る会』が、できちゃいました。(苦笑)

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 あれから幾日か過ぎていき……あと1週間ほどで卒業式、という日。

 いつものように音楽室で楽器の用意をしていた私は、まわりがざわつき始めたのに気付いて顔を上げた。

―― あ、……

 稔先輩が、こちらに向かって歩いてくる。

 目が合うと、胸がキュンとして温かくなってくる。

「こんにちは(……先輩、好きです……)」

 気持ちを込めて挨拶をする。と、稔先輩がどんどん近づいてきて……私の目の前で止まった。

 

「君のことが大好きだ、僕と付き合ってほしい」

「え…!?」

 

  一瞬、信じられなかった。

 夢にまでみてた。言ってもらいたかった。でも言ってもらえないだろうと思って、諦めていた。

 その言葉が今、先輩の口から聞けるなんて…… 

「本当?」

「本当にホント。ずっと一緒にいようね♪」

「……嬉しい……」

 目から涙が零れた。

 小さな私は、先輩の腕の中にすっぽりと入ってしまう。

 私を抱きしめながら、髪の毛を撫でてくれる先輩。見上げたら、額にキスをされた。

 

 

 

 音楽室の中央付近。

 稔先輩の腕の中で、トマトのような真っ赤な顔をして固まってしまった私。

 その一部始終を、顧問の楢崎先生も、みんなも見てた。

 でも私の目に映っているのは、あなただけ。

 

 あなたが……大好き。

 

 

― End.―

2009.03.09. up.

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