番外編
もしかして治ったのかしら? なんて思っていたけれど……短大を卒業して彼女たちに会えなくなると、私は再び不眠症になってしまった。
そのことは、彼女たちの存在の大きさを再認識させられたのと同時に『他人に頼らないと何も出来ない人間だ』という事実を突きつけられたようで……
気持ちが落ち込んでしまった私は、なかなか浮上することができなかった。
「人恋しくて不安で、誰か頼れる人が傍に居て欲しい……」そう思っていた私に、お付き合いを申し込んできた男性がいた。
通勤途中で知り合った彼は、とても好感の持てる人物だたから……私は受けることにした。
人当たりの良い彼は、ちょっと強引な所もあった。
そんなところも好きになっていたのに……キス以上のことが出来ないと分かると、彼は私の元から去っていった。
それから交際を申し込まれて振られて、を2度繰り返した私は……あの日、雄二さんと出会った。
そして今は………
* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *
時間にすれば、ほんの数分の間だった。けれど私は彼女たちと過ごした日々を、その後のことを思い出していた。
浩一郎さんと彼女(=藤森優華ちゃん)を互いに紹介した私は、引っ越しの連絡を入れ忘れていたことを優華ちゃんに謝った。
「…いいよ、怒ってないし。ただ、連絡がつかなくて心配してただけだから。ね?」
「優華ちゃん……」
「あのね。来月、陽子ちゃんが旦那様と子どもと一緒にアメリカから帰ってくるんだって。だから……」
そのときに5人で会おうよ♪ と言う優華ちゃんと、携帯の番号を交換した。
「由紀ちゃん、とっても良い顔してる。今、幸せなんだね……。私が頼むことじゃ無いかもだけど……由紀ちゃんのこと、よろしくお願いしますね!」
別れ際。
優華ちゃんの言葉に、私は胸がいっぱいになって何も返せなかった。
けれど浩一郎さんは「ああ、もちろん」と言いながら、私の肩を引き寄せて抱きしめてくれた。
「浩一郎さん、でしたっけ? そうゆうのは『家で』やっちゃってくださいよー!
もう……ダーリン出張中なのに、会いたくなっちゃったじゃないですかぁ〜〜」
優華ちゃんが浩一郎さんの顔を見て軽く抗議した(?)かと思えば私に向き直り、驚きの発言をした。
「引越し先が分かんなくて知らせられなかったんだけど……私、結婚したのよ♪」
「結婚!?」
「じゃあ、また連絡するね〜」
にっこり笑って「バイバイ♪」と去って行く優華ちゃんを、唖然として見送る私。
「由紀の友だち全員に会ってみたいな。面白そうだし、それに……僕にとっても“恩人”と呼べる人たちだろうからね」
浩一郎さんは優華ちゃんの後姿を見ながら、とても楽しそうに笑っていた。
― End.―