続編

恋しくて、せつなくて…(2)

【稔】

 隣県の私立K大学は、電車とバスを乗り継いで1時間半ほどの場所に有る。

 そこの理工学部 電気工学科に入学した僕、法学部 法律学科に入学した兄。そして……文学部 英文学科に入学した羽山さん(=兄の彼女)。

 

 羽山さんが受験して合格した中には、僕たち兄弟と同じ大学があった。

 「学と両想いになったんだから、やっぱ同じトコに行くのが当然でしょ?」そう言って笑う羽山さんを、愛しそうに見つめながら微笑む兄。

 大学のキャンパス内。僕は、そんな2人をとても羨ましく思う。 

 今まで「人が羨ましい」なんて、そんなこと思ったことも無かったのに。

―― 僕の傍に裕美が居てくれたら、こんな気持ちにならなかったよね……

  そう思うたびに、あんなに小さくて可愛い彼女の存在が、僕の中で大きくなる。

 僕に『初めて』の経験を、たくさんさせてくれる彼女。裕美……

 

 大学での毎日は、とても充実している。けれど此処には君が―― 裕美が、居ない…

 

* * * ☆ * * * ☆ * * * ☆ * * *

 

 「男の人とお付き合いするのは初めてで、何も知らなくて…」なんて裕美は言うけれど、僕だって似たようなモノだ。 

 付き合ってきた人数自体は、両手で数えられるくらい居た。

 女の子から告白されると、「じゃあ付き合おうか」と返事をしていた。

 断るのも可哀想だし、別に嫌いじゃないし……そのうちに好きになるかもしれない、と思いながら付き合っていた。

 だけど僕の外面しか見てくれていなかった女の子たちは、僕が『好き』という感情を持つ前に、僕から離れて行ってしまった。

 そして「好きです」と告白されることが、だんだん苦痛になってきた僕は……大学受験を理由に、その全てを断るようになった。 

 その僕が、裕美に出会って……やっと気付いた。 

 「断ったら可哀想だ」なんて、そんな気持ちで付き合っちゃいけなかった。そんなのは『優しさ』じゃない。

 本当に「好きだ!」と心から思える人とだけ、付き合うべきだったんだ。

 一方通行の想い。

 2人の温度差。

 僕も傷ついたけれど、彼女たちだって傷ついたんだと……今なら分かる。

 

 

 裕美のことを好きになってから、様々な心の変化に戸惑っている僕。けれどもそれがまた新鮮で、嬉しく感じているのもまた事実で……。

 自分の中に、こんな気持ちが存在していたなんて初めて知った。

 本人は自覚してないだろうけど、君は僕に大切なモノをたくさん教えてくれる。

 車の免許を取る為に寂しい思いをさせてしまったけれど、もうそんな思いはさせない。だから我慢なんてしないで! 思っていることは何でも僕に話してほしい。

 

 

 裕美のことが、どうしようもなく好きで好きで堪らない。可愛くて可愛くて……腕の中に囲んで抱きしめて、離したくないほど愛しい。

 会えば嬉しくて楽しいけれど、帰宅するときは辛くなる。 

 こんな感情は初めてだ。どう表現したらいいんだろうか……

 

2009.08.21. up.

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