許容量を超えて(04.香織)
私をココ(講習会場)へ案内してくれた課長は、私がお礼を言う間も与えずに…さっさと会社へ戻って行った。
明日からは会社へ寄らず、直接ココへ来て講習を受ける 会社へ出勤するのは、来週の月曜日から な〜んて必要事項は、ちゃんと言ってくれたけど…それだけ、だった。
俳優かと思うくらいカッコ良くて、155cmの私が見上げるくらいに背か高くて、とてもスーツの似合う課長。 機嫌悪そうに眉間に皺を寄せて、必要最低限の言葉しか話さなくて、怖い課長。 たぶん…とても仕事が出来る人だと思うし…とても厳しい人なんだと思う。 そして…ちょっと優しいところもある人…。
「でも…笑うことって、あるのかなぁ」 想像してみたけど、……????……無理だった。
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入ってきた講師の先生は…ミニのスーツが良く似合う、綺麗なお姉さん。(綺麗というよりカッコイイかも♪) …私より3歳くらい上…かな?
「さぁ、始めましょうか?」 とっても素敵な笑顔なんだけど… その手に持ってる分厚い物は、何なんですか? もしかして…それが教科書なの!? まさかそれを全部、覚えろってことじゃないですよね? 始める、って言われましても…私しか居ないんですけど?
「マンツーマンで教えるのって、初めてなのよ? それも6日間続けて、あなたと2人きりなんてね〜」 「えぇ〜ッ!」 「あら、聞いてなかったの? お昼の休憩を挟んで、10時から16時まで。初めの3日間は、キーパンチャーの講習。後の3日間は、スーパーバイザーの講習。ハードスケジュールだけど、頑張りましょうね?」 持ってきた本やら何やらを順に机の上に置きながら、とんでもないことを簡単に仰る先生。
ホントに!? マジですか!?
「…はい。よろしくお願いします」 先生の目が真剣だったから、私も覚悟を決めて返事をした。
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「…『人間のすることには間違いがある』という前提の下、同じ原稿を2回入力します。1回目の入力を『エントリー』、2回目の検査入力を『ベリファイ』といいます。『エンター』『ベリー』と略すこともあり……」 「え…この『エンター』って…パソコンの『Enter』キーとは別の意味なんですか?」 「全く別です。………端末機械で入力したデータは全て、ホストコンピューターに……」
先生からは「こんな短期間で意味を理解するのは無理なんだから、とにかく覚えなさい」と、講義の最初に言われたから…なんとか頑張って覚えている。 初めて聞く専門用語は、まだいい。 けど『パソコン教室』で習った単語が出てくると、混乱しちゃって…その度に、先生に質問してしまうの。
「あなたは、スーパーバイザーになるのよ? そのために、今はキーパンチャーの勉強をしているの。分かる?コレを全部やってしまわないと、先に進めないわよ」 「はい」 …そうでした。
それからはもう、頭に詰め込んで詰め込んで…………やっと1日目が終了。 6日間やり遂げた頃には…許容量を悠に超えていて、もう…ダウン寸前だった。 |
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